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T製作所では、社長は身を粉にして外を飛び回り、内にいては睡眠時間を削ってまで事務所か工場で働いていました。 従業員も親類縁者や縁故採用というせいでもありますが、みんな真面目に汗水たらして深夜残業までいといません。
しかし、どうしてこんなに忙しいのか。 それだけ仕事があるというのは有難いことだし、信用されているのに違いないが、「作業のやり方に不手際があるのではないか、無駄があるのではないか」と考えるようになったのも、自然の成り行きです。
「どうにかせねば」というのが、社長以下みんなの暗黙の一致した気持ちであったようです。 ある日わたしは、その社長と話す機会があり、問わず語りに社長は、会社の実情を話してくれました。
相談を受けたというほどではありません。 ただ、これで社長以下全従業員が「どうにかせねば」という問題意識をもっているということが、よくわかりました。
この「まず問題意識をもつ」ということがなにより重要であるということを、ここで肝に銘じておいていただきたいと思います。 「どうにかせねば」「なんとかしたい」という問題意識がないところで、なにをお話しても無駄です。
いくら品質管理うんぬんをご指導申し上げても、馬の耳に念仏です。 「どうにかせねば」←「なんとかしたい」からこそ、「なんとかなる」のです。
問題意識にすでにお気づきのところは幸いです。 しかし、仮りにお気づきになっていなくても、たいていの会社は潜在的に問題意識をかかえておられるものと、わたしは確信しています。

世の中、なんの問題もないラクな企業経営や仕事・作業など、あるはずもありません。 問題意識があるところに、問題解決しようという努力が生まれ、ひいては向上するのです。
社長、部長、課長であろうと、平社員や末端の職人、作業員であろうと、同じことなのです。 さてT製作所の社長に、わたしは、いきなり品質管理というダンビラを振りかざさないことにしましょう、と提案しました。
そう、「標準化」でいいではありませんか。 もっと平たくいえば「整理・整頓」「順序だて」ということでしょうか。
家庭をかえりみてください。 残念ながら多くの家庭では、ウサギ小屋とはいいませんが、まあそれほど広くない家の中に、家具、電機製品、調度品、日用雑貨、置物・小物などが所狭しとあふれています。

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